アイブリス創薬株式会社

HLAHLAについて

HLA(Human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)とは1954年に発見された白血球の血液型のことで、ヒトのMHC(Major Histocompatibility Complex: 主要組織適合性複合体)を意味します。

赤血球の血液型はA型、B型、O型、AB型としてよく知られていますが、HLAは数万種類にもおよびます。この膨大な種類のHLAを目印にして「自分」と「自分以外(外部から侵入してきた異物)」を免疫が識別できるようになるのです。

HLAは免疫機能において重要な役割を担っているため、臓器移植、造血幹細胞移植、法医学、疾患感受性、再生医療などの分野で盛んに研究が行われています。

HLAハプロタイプ

私たちヒトのほとんどの遺伝子は2つの型が存在します。これは、ヒトの体細胞は2倍体であり、1つの型は父親から、もう1つの型は母親からそれぞれ遺伝子を受け継ぐためです。そのため、両親から受け継いだ2つの型が1セットとなってHLAも形成されています。それぞれの片親の遺伝子の型をハプロタイプといいます。親から子へ受け継がれる際、HLAハプロタイプは基本的に維持され、遺伝パターンは4通りになります。

HLA検査の目的

HLA検査はどのような目的で実施されるのでしょうか。

  • 1つ目は臓器移植です。臓器移植の際、HLAが適合していることが条件となります。もしHLAが適合しない場合、免疫が「自分以外」のものと判断して拒絶反応を起こしてしまうからです。HLAは両親から半分ずつ受け継ぐことになります。そのため、兄弟姉妹間では1/4の確率で適合しますが、血縁関係であっても適合しないケースがほとんどです。
  • 2つ目は血小板の輸血です。輸血をしても血小板の増加が認められないことがあります。この原因として、非免疫性によるものと免疫性によるものがありますが、後者ではHLA抗体が患者さんの身体の中でできてしまっている報告が95%以上に及びます。そのため、輸血においてもHLAの適合性を調べることが重要になってきます。
  • 3つ目は病気のかかりやすさを知ることができます。まだまだ研究段階ではありますが、多くの研究者によってHLAと病気のかかりやすさの関係が解明されてきました。病気は遺伝的要因と環境的要因によって発症するので、ご自身のHLAから遺伝的にかかりやすい病気を知ることにより、環境的要因すなわち生活習慣を改善することで予防することが可能になります。昨今、ご自身や身近な大切な人のためにHLA検査を受けて将来に備える方も増えつつあります。
  • 4つ目は親子鑑定です。HLAは遺伝的多様性が高いことから、親子鑑定にも利用することができます。「HLAハプロタイプ」でも述べていますが、理論上両親から1つの型ずつの遺伝子を受け継ぐため、HLAハプロタイプの一致率から親子の判定が可能です。

HLAの歴史

MHCの認識は1936年のアメリカの Snell博士らのマウスを用いた皮膚移植研究から始まります。彼の研究から純系マウスにおける同系間の皮膚移植は生着しますが、異系間では拒絶されるという結果が得られました。そこで、A系とB系の交配させた子供について研究を行ったところ、親から子供への皮膚移植では、子供は両系の要素を持っているため、どちらの親の皮膚でも生着します。一方、子供から親への皮膚移植では、A系の親にとっては子供のB系の要素を非自己として認識し、B系の親にとっては子供のA系の要素を非自己として認識するため拒絶します。このことから自己・非自己の認識は系統や遺伝的要素によって決まることが明らかとなりました。

1950年代に、フランスのDausset博士によって頻回に輸血を受けた患者の血清中に他人の白血球を凝集させる抗体が発見されました。この抗体が認識する抗原はヒト白血球抗原(HLA)と命名されました。その後、多くの研究者によってHLAは自己・非自己の決定因子であり、ヒトMHCであることが明らかとなったのです。

唾液中に含まれる遺伝情報とHLA

唾液から遺伝情報を調べることができます。というのも唾液の中には口内上皮細胞が常に剥がれ落ちており、その細胞の中でDNAが安定した状態で存在するからです。犯罪捜査や父親証明などの遺伝的検査や個人識別のために、唾液から抽出されたDNAが利用されることがあります。また、唾液から抽出されたDNAは、遺伝学的疾患の診断や、遺伝子治療などにも利用されます。

HLA遺伝子のDNAも唾液に含まれていることが分かっていますので、HLAの低侵襲な解析対象として有用であると考えられます。

一方で、唾液からの抽出方法や分析手法はまだ発展途上であり、全ての情報を正確に取得することができるわけではないこともあります。今後、唾液からの情報取得技術の発展によって、より多くの重要な情報が得られることが期待されています。