アイブリス創薬株式会社

AUTOIMMUNE DISEASE自己免疫疾患とは

自己免疫疾患は、免疫系が体内の正常な組織や細胞を異物とみなし、攻撃してしまう疾患の総称です。そのため、慢性的な炎症を引き起こすことがあり、臓器や神経系にダメージを与え、病気の進行によっては生命に関わることもあります。自己免疫疾患の原因は、遺伝的要因や環境要因、感染症、ストレスなどが関与していると考えられていますが、詳細なメカニズムは未解明な部分が多いです。

バセドウ病

バセドウ病とは、甲状腺ホルモンの過剰分泌による自己免疫疾患の一種で、甲状腺機能亢進症とも呼ばれています。甲状腺ホルモンは下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH)が甲状腺濾胞細胞に存在するTSH受容体を刺激することによって分泌され、身体の代謝を調整する重要な役割を担っています。バセドウ病はTSHとは別にTSH受容体を刺激する物質(抗TSH受容体抗体や甲状腺刺激抗体)ができてしまい、それによって甲状腺ホルモンが過剰分泌されることで発症します。

バセドウ病の症状には、甲状腺の腫れ、眼球突出、不安や興奮・不眠症やイライラなどの神経症状、食欲亢進、体温上昇や大量発汗、体重減少、筋肉の衰えや疲労感などがあり、女性では生理が止まることがあります。これらの症状は個人によって異なる場合があり、他の疾患でも見られるため、正確な診断を受ける必要があります。

バセドウ病の診断には、一般的に以下の方法が用いられます。

  • 血液検査:甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンおよび抗TSH受容体抗体などを測定します。
  • 超音波検査:甲状腺の形状や大きさ(腫れ)、血流状態などを観察します。
  • 摂取率検査:患者さんに放射性ヨウ素を投与し、甲状腺の放射性ヨウ素の吸収量を測定することで、甲状腺の機能を評価します。

バセドウ病の治療には、以下のような方法があります。

  • 薬物療法:バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰分泌される自己免疫疾患であるため、甲状腺ホルモンの合成を抑制する薬(メチマゾールやプロピルチオウラシルなど)が使用されます。
  • 放射線療法:放射性ヨウ素を摂取させ、甲状腺に取り込まれた放射性物質によって甲状腺細胞を破壊することで甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑制します。
  • 手術療法:バセドウ病が重症化している場合や、抗甲状腺薬剤や放射性ヨウ素療法が有効ではない場合に行われる治療法です。甲状腺を切除することで、甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑制します。

バセドウ病は、適切な治療を受けなければ、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。完治は難しいとされていますが、適切な治療を受けることで、多くの場合、バセドウ病の症状は改善され、患者の生活の質が向上することが期待されます。

橋本病

橋本病とは甲状腺の慢性的な炎症によって引き起こされる自己免疫疾患の一つで、慢性甲状腺炎とも呼ばれています。橋本病は甲状腺の慢性的炎症によって甲状腺ホルモン不足に陥り、甲状腺機能低下症を引き起こす病気です。また、女性に多く見られ、年齢が上がるほど発症リスクが高まることが特徴に挙げられます。

橋本病の症状は、甲状腺ホルモンの低下によって引き起こされるため、多様な症状が現れることがあります。主に疲労感や筋肉の痛み、冷感や体温低下、体重増加、便秘、声のかすれやのどの痛み、皮膚の乾燥やかゆみ、脱毛などが含まれます。これらの症状は個人差があり、全ての症状が現れるとは限りません。また、他の疾患と似た症状が現れることもあるため、専門医による診断が必要です。

橋本病の診断には、次の検査が一般的に使用されます。

  • 血液検査:血液検査は、橋本病の診断に最も一般的に使用される方法です。血液検査では、TSH、遊離型のフリーT4(サイロキシン)とフリーT3(トリヨードサイロニン)の数値、甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン抗体(TgAb)と抗ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の検査が含まれます。TSHは通常高く、フリーT4およびフリーT3は低くなる傾向があります。また、甲状腺自己抗体が陽性である場合、橋本病を患っている可能性が高いです。
  • 超音波検査:甲状腺の大きさ、形状、組織の状態を評価するために使用されます。橋本病の場合、甲状腺が大きくなっており、表面に凹凸が見られます。また、低エコー性の不均一な像が見られることがあります。

橋本病の治療方法は、主に甲状腺ホルモンの補充療法になります。橋本病によって甲状腺ホルモンが不足している場合、甲状腺ホルモンの代替物であるレボチロキシン(T4)を毎日服用することで治療が行われます。この薬は、甲状腺ホルモンの不足を補うことで、代謝率を正常化し、症状を改善することが期待できます。甲状腺ホルモンの服用は、至適量を内服している限り副作用はありません。

関節リウマチ

リウマチは、主に成人の女性に見られる炎症性自己免疫疾患の一種で、関節やその周りの組織に慢性的な炎症を引き起こす疾患です。炎症によって関節が腫れ、痛み、こわばるようになります。また、関節以外の器官にも影響を及ぼすことがあり、肺、心臓、腎臓、血管、目などが炎症を引き起こすことがあります。また、リウマチは慢性的な病気で、症状が治まったとしても、再発する可能性があります。

リウマチの原因については、明確にはわかっていませんが、以下の複数の要因が関与していると考えられています。

  • 遺伝的要因:家族内での発生率が高いことが報告されており、遺伝的な要因が関与している可能性があります。特定の遺伝子や遺伝子群がリウマチの発症に関連しているとする研究もあります。
  • 環境要因:喫煙、感染、ストレス、飲酒などの環境的要因が関与している可能性があります。特に、喫煙はリウマチの発症リスクを高めることが報告されています。
  • 免疫学的要因:免疫系の異常が関与していると考えられています。通常、免疫細胞は身体の異物を攻撃するために活性化しますが、リウマチでは免疫細胞が身体の自己組織を攻撃する異常な反応を示すことがあります。このような免疫細胞の異常が、リウマチの関節や組織の炎症を引き起こすとされています。

以上の要因が複合的に関与して、リウマチが発症すると考えられています。しかし、詳しいメカニズムについては未だ解明されていないため、今後の研究が必要とされています。

リウマチの診断方法には、いくつかの方法があります。以下に、代表的な診断方法について説明します。

  • 身体検査:関節の腫れや熱感、動きの制限などがあるかどうかを調べます。また、皮膚の状態やリンパ節の腫れなども調べます。
  • 血液検査:血液中の炎症反応を示すC反応性蛋白(CRP)や赤血球沈降速度(ESR)の値、免疫細胞の異常な数や機能、リウマチ因子、抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体などを検査します。
  • 画像検査:関節の状態を詳しく調べるために、レントゲン、超音波、MRIなどの画像検査が行われます。画像検査で関節の破壊や腫れ、炎症などを確認することができます。

リウマチの診断には、上記のいずれかの検査が行われることが多く、検査結果を総合的に判断して診断が行われます。また、リウマチと似た病気も存在するため、正確な診断のためには、診療科や医師の専門性によって異なる場合があるため、専門医の診断を受けることが重要です。

リウマチの治療方法は、症状の程度や進行度合い、患者さんの年齢や身体状況などによって異なります。以下に代表的な治療方法について説明します。

  • 薬物療法:リウマチの治療には、炎症を抑えるための炎症抑制剤や、関節の痛みを和らげるための鎮痛剤、ステロイド剤、病気の進行を抑制するための免疫抑制剤などが用いられます。これらの薬物療法は、個々の症状や進行度合いに応じて組み合わせや投与量が調整されます。
  • 物理療法:関節の可動域を広げるためのストレッチングや運動療法、マッサージや温熱療法、リハビリテーションなどが行われます。これらの物理療法は、筋肉の強化や関節の可動域を拡大することで、痛みの緩和や生活機能の改善を促します。
  • 手術療法:重度の症状や合併症がある場合には、手術が必要となることがあります。手術療法には、滑膜切除術、人工関節置換術、関節固定術などがあります。

リウマチの治療は、症状や進行度合いに応じて多岐にわたります。また、長期間にわたる治療が必要であり、個々の患者さんに適した治療法を医師が選択し、定期的にフォローアップを行うことが大切です。